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zoom RSS 日本文学探訪128 植村武先生の短歌のロシア語翻訳4 誤読の例・上田敏氏の名訳詩

<<   作成日時 : 2017/04/06 11:34   >>

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 当時のソ連政府が発行した「世界文学シリーズ」の「日本詩歌集」の中に植村武先生の短歌が5首、ロシア語に翻訳されて掲載されており、短歌とロシア語翻訳がどのように違うかを拙ブログ記事で取り上げていますが、その続きです。

 青淵(おをぶち)の水際(みぎは)の岩のひとつひとつうづたかきまでに雪を載(の)せたり

この歌が、ロシア語では次の四行詩として翻訳されています(天理大学ロシア語科の大谷深教授の訳による)。

 海の青い渦の上に
 雪の白い渦が
 周辺の岩から
 ずり落ちている

 先生の歌集「青波」の随想「短歌の翻訳」では、「この訳詩に相当する内容の歌を、私は詠んだ覚えがない」、「誤訳であることに気づいたのは、ずっと後のことであった」などと記されています。
 確かに、全くの誤読であるというのは一目瞭然ですし、歌の内容が完全に取り違えられています。
 こういうことから、同随筆では、「詩歌の翻訳となると、概念的な意味の上だけでさえ、右のような誤読が生じるのである。ましてや、微妙な詩情そのものの訳出となると、まことに心細いかぎりであるといわねばならない」と指摘されています。
 もっとも、同随想では、翻訳がうまくいっているのみならず、「原作以上の傑作といわれている」例として、上田敏氏の「海潮音」のカール・ブッセの訳詩「山のあなたの空とほく、幸ひ住むと人のいふ」と、ヴェルレーヌの訳詩「秋の日の ギオロンの ためいきの 身にしみて ひたぶらに うら悲し」が挙げられています。確かに、語調も素晴らしいし、独特の世界観を築き上げています。これらの訳詩は、日本の近代詩の歴史を現代国語(現代文)の授業で取り上げた時に、プリントに必ず掲載し、紹介し解説しました。
 同随想では、翻訳者に必要な三条件として、「すぐれた語学の力と、鋭い鑑賞眼と、卓抜した創作技能」が挙げられており、上田敏はそれを兼ね備えていたと述べられていますが、その通りだと思いますし、上田敏氏の訳詩教材としてもっと取り上げるべきだと思います。原詩との比較は難しいでしょうが、訳詩として独立して成り立っていますから、鑑賞は充分できるはずです。
 

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