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zoom RSS 三成の実像1596 美術探訪12 「海北友松展」14「月下渓流図屏風」 三成らへの思い

<<   作成日時 : 2017/07/01 10:29   >>

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 「海北友松展」の「第十章 豊かな詩情ー友松画の到達点ー」に展示されていたのは、60年ぶりに里帰りしたアメリカのネルソン・アトキンズ美術館が所蔵している「月下渓流図屏風」でした。確かに、深みのある風趣に富む作品であり、友松がたどり着いた世界を感じることができました。
 この絵について、図録には次のように要領よく記されています。
 「淡い月明かりに照らされてシルエット風に浮かび上がる、もやに煙る渓谷。渓流の周囲には梅や椿、愛らしい土筆や蒲公英、菫などが見える。清楚な白い梅花からは、上品でほのかな香りが漂ってくるようだ。思うに、早春の明け方の情景をこれほど詩情豊かに歌い上げた作例はほかにないだろう。こうした淡麗かつ瀟洒な画風はのちに狩野探幽によって具現され江戸絵画の基調ともなっていくだけに、時代を先取りした友松の、鋭敏で芳醇な感性には改めて驚嘆せざるをえない」と。
 5月12日付の朝日新聞夕刊に友松のこの絵についての記事が載っていますが、その絵には三成や西軍への思いもこもっているのではないかということで、次のように記されています。
 この絵が「描かれたのは、石田三成ら友松の知人の西軍武将が敗死した関ヶ原の戦いの後とみられる。静謐さがただよう世界には彼らへの思いが込められているのだろうか」と。
 確かに静けさが感じられる作品です。2000年に放送された「葵 徳川三代」で江守徹さん演じる三成が処刑される場面も、静寂そのものでした。この絵を見ていると、自分にはその三成の処刑される場面が思い浮かんできます。友松も三成たちの最期に思いを馳せながら、この絵を描いたのかもしれません。
 この新聞記事には、京都国立博物館の学芸部長である山本英男氏の評も掲載されています。
 すなわち、「建仁寺大方丈に描いた雲龍図のような、これでもかと墨を書き付けた気迫あふれる重厚な作品とは大きく異なる。肩の力が抜け、新たな境地に達している」
 「友松が習得した様々な技術がすべて駆使された、日本的水墨画の完成形。等伯の『松林図屏風』に比肩する傑作」と。
 安部龍太郎氏の小説「等伯」でも、「松林図屏風」が等伯のたどり着いた境地として位置づけられており、その絵を描写する箇所は鬼気迫るものがあり、筆致のすごさを感じました。ただ、拙ブログ記事でも以前触れたように、この小説では三成の描き方が悪く、後味の悪さだけが残りました。千利休の切腹を画策したのも三成なら、狩野永徳を支持し等伯を敵対視するのも三成でした。実際の三成は等伯ともっと親しかったと私は思っています。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
お久しぶりです。
自分もこの展覧会、行きました。
「日曜美術館」でも紹介されていましたが、「月下渓流図屏風」は、生で見ると静謐で素晴らしいと思いました。
親しい人物の多くの死を見続けてきたであろうことを思うと、色々感慨深いものがありますね。
他には、「野馬図屏風」等の可愛い馬の絵は、テレビで見た戦国時代に活躍していたであろう日本在来種である木曽馬が、まさにああいう感じでした。
石田治部と分かりやすく書かれていた「兼如筑紫道中記」も興味深く見ました。

小説「等伯」は未読ですが、派手好きの秀吉ですら長谷川等伯のことは評価していたようですし、三成を悪役にするのはそろそろやめて欲しいですね。
杏奈
2017/07/01 21:26
 杏奈さん、コメントありがとうございます。しばらくコメントチェックを怠っていましたので、公開が遅れてしまい、申し訳ありません。
 「海北友松展」見に行かれたのですね。「月下渓流図屏風」も「野馬図屏風」も素晴らしいかったですね。あれだけの数の友松の作品が一堂に会するのは、もうないかもしれません。
 「兼如筑紫道中記」の展示も貴重でしたね。三成のことも触れられていたので嬉しい思いがしました。二人の関係を裏付ける史料がもっとあればいいのですが。
 三成=悪役は、作家たちの勉強不足によるものだと私は考えていますし、今なお江戸時代に書かれたものを鵜呑みにしているとしか思えません。
 またご訪問ください。よろしくお願いいたします。
石田世一
2017/07/08 15:50

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