古典文学探訪7 「竹取物語」6

 子安貝の由来譚になっているニューカレドニアの童話「ワビュビュ」ですが、部族の長の悪い描かれ方が印象的です。権力者としての地位を利用して、悪いことをするというのは洋の東西を問いませんが、死体を捨てに行かせてまで証拠隠滅をはかるというのは徹底しています。むろん、そうしなければ、ワビュビュが貝に生まれ変わることができず、必然的な話の展開なのですが、為政者の悪さが際立っています。
 「竹取物語」でも、求婚する5人の貴公子のことを述べるくだりは、権力者を皮肉り批判していると言えます。そのうち3人までが、はっきり「大伴」「阿部」「石上」という実在の姓で登場しています。中でも大伴氏は武門を誇る名家ですが、この作品ではさんざんにこきおろされています。「大伴の御行の大納言」はかぐや姫に龍の首の玉を要求され、家来たちに取りに行かせ、自分はかぐや姫を迎えるために立派な建物を作ります。妻たちは出て行きますし、家来たちは主人の言うことを聴くどころか悪口を言い、思い思いのところに去ってゆくのです。大納言は家来が戻ってこないので自分で難波から船に乗って出かけますが、暴風に遭い、龍のたたりだと思ってしまいます。船は明石の浜に打ち上げられますが、大納言の腹はふくれ目は腫れ上がって、かぐや姫のことを「大盗人」だと悪態をつきます。カラフルにしつらえてあった屋根の糸もカラスに持ってゆかれますし、妻たちには笑われます。名門かたなしといった印象ですが、残った財産を家来たちに分け与え、かぐや姫をきっぱりと思い切るという潔いところも見せます。しかし、全体的には大伴氏が茶化されていることには変わりありません。
 「石つくりの皇子」は偽物の鉢を持ってきますし、「くらもちの皇子」は職人たちに精巧な「蓬莱の玉の枝」を作らせますが、結局見破られてしまいます。「火鼠の皮衣」を要求された阿部のむらじは、本物だと信じて買い求めますが火の中にくべると燃え上がり、偽物であることが判明します。一番悲惨なのは「石上まろたり」であり、燕の子安貝を手に入れようとして、籠から下に落ちてしまい、体が弱って命を落としてしまいます。手に握っていたものは子安貝ではなく、燕の糞だったというのですから、ひどい扱われようです。
 権力に対する批判精神が旺盛な「竹取物語」であり、そういう点で「ワビュビュ」とも共通性があるわけですが、帝の描き方だけは別格です。狩りを装い、かぐや姫に会いに行ったり、無理に連れ帰ろうとしたりしますが、かぐや姫が普通の人間ではないことが分かると無理に連れ帰ることは断念します。彼女のことが忘れられず歌のやり取りはしますが、無茶はしません。帝は別格扱いであり、そういう特別な帝まで心のとりこにするかぐや姫のマドンナ的な存在が浮き彫りになるという仕組みになっています。

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