漫画探訪8 手塚治虫作品における映画の影響について

 手塚治虫は子供の頃から映画によく接していました。それは彼の父親が家庭用の映写機で日本や外国のアニメを見せてくれていたからです。昭和初期にあって、珍しくモダンな父親であったわけであり、手塚治虫にとってはこの上なく恵まれた環境であったと言えます。ディズニー映画にもこういう形で早くから出会っており、彼の作品に動物たちがさかんに登場してくるのも、ディズニー映画に影響されてのことだったと思われます。むろん、そこには人間に限らず、この世に生きものすべてを平等に見ている作者の温かい目と広い心があるからですが。
 手塚治虫は小学生の頃から、父親の八ミリ撮影機を使って友達に演技をしてもらって映画を作っていました。彼がアニメ映画に賭ける情熱はこういう時代から培われたもののようです。
 手塚治虫は映画的手法を作品にいろいろと取り入れ、躍動感やリズム感を生み出し、作品に幅と奥行きをもたらしています。たとえば、「火の鳥」の中で、少年が意識を失ってゆき、場面が変わるところをズームやクローズアップの手法を用いて巧みに描いています。しかも、一コマの大きさを徐々に小さくしてゆき、黒の塗りつぶしの絵を入れることで、気を失ったことを示したり、次に場面が転換し、静的な雰囲気のまま、今度は逆にコマを徐々に大きくしていったりして、一層効果を上げています。
 「ボンバ」という作品の中では、少年の前に馬の幻影が現れる場面では、少年の表情と闇の中の線路とを交互に描くという、言わばカットバック的な手法によって、劇的な緊張感をかもし出しています。しかも一コマ一コマが四角の枠でなく、台形を横にした枠を使っているのも斬新です。カットバックというのは、二つの場面を交互に映し出してドラマチックな効果を高める映画の技術ですが、手塚もそういう手法を漫画にふんだんに取り入れています。
 また見開き二ページを大きな一コマの絵にして、その中に何十人もの人物を登場させてその様子を克明に描くことも手塚はよくしていますが、これなどは壮大豪華な場面を見せどころにしたスペクタクル映画の影響と考えられます。

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