映画探訪10 東野圭吾原作「変身」 「山月記」や「夏の香り」との共通項

 脳の一部が主人公である純一(玉木宏)に移植されるという内容の映画ですが、むろん、現在の技術では無理であり、将来も倫理的にはありえないことかもしれません。脳の一部が移植されてしまうことで、純一の人格が微妙に変わっていきます。実は自分の頭をピストルで撃った強盗犯の脳の一部が、自分に移植されていたことが分かり、凶暴な性格に変わってゆきますが、自分ではどうしようもありません。
 こういう展開は中島敦の書いた「山月記」を思い出させますし、作者の頭の中にこの作品があったとも考えられます。「山月記」では、虎に変身した李徴が次第に人間の心を失ってゆき、完全に虎になってゆくことを恐れています。たまたま現れた友人に自分の気持ちを述べ、自分がまだ人間の心を失っていない間に、自分のところから去ってゆけと頼みますが、自分でその人間性喪失を止められないという点では、両者の作品とも同じです。
 「変身」の主人公には、愛する女性の恵(蒼井優)がいますが、次第に強盗犯の心に支配されるようになり、彼女の言動に苛立ち、一時は彼女の首を絞めてしまうところまで発展します。その時は理性が戻って、事なきをえますが、これからもっとエスカレートしてしまうことが目に見えています。彼女を守りたい主人公は、自分の命を断ってしまうという選択肢を選びます。確かに、再手術を受ければ別ですが(それも医者に拒否されます)こうする以外に解決の仕様がありません。
 移植されたものが異物で、かえって本人にとっては邪魔になるという筋書きは韓国ドラマ「夏の香り」とも共通しています。「夏の香り」では心臓移植でしたが、主人公のミヌは、かつての恋人であったウネの心臓が、別の彼女であるへウォンに移植され、そのへウォンを好きになってしまいました。彼女もまたミヌを愛してしまいますが、移植された心臓がウネのものであったという事実を知った彼女は苦しみます。しかし、その解決策として、へウォンは心臓の調子が悪くなり、新たに第三者の心臓を再び移植されて、体もよくなり、2人の仲も丸く収まるという結末が用意されていました。
 この解決策について、私は以前に「韓国ドラマ探訪」のブログの中で批判したことがありますが、その場合はウネは何の罪もない女性であり、「変身」の場合は殺人鬼ですから余計に難しい問題です。やはり、脳の移植者に問題ありということで、再手術しか解決法がないのでしょうか。
 なお、「山月記」では李徴は詩人であり、「変身」でも純一は絵を描いており、両者ともに芸術家的な人物という共通点があります。芸術を創造できるのは人間だけであり、人間性喪失を芸術精神の消失という象徴的な出来事で語っているのかもしれません。

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  • 蒼井優 かわいいウソを告白

    Excerpt: 記者会見映像はこちら 女優・蒼井優が、WOWOWの新番組「蒼井優×4つの嘘(うそ... Weblog: なおきち情報 -Home Basic-,映画探訪10 東野圭吾原作「変身」 「 racked: 2008-01-26 13:54
  • 蒼井優さん~~☆

    Excerpt: カワいいですよね~。<br /> <br /> 好きなタレントの一人です☆。。。<br /> <br /> ↓寒いですね~。。ブーツ買っちゃいました~ Weblog: ,映画探訪10 東野圭吾原作「変身」 「 racked: 2008-01-26 15:47
  • 『変身』'05・日

    Excerpt: あらすじある病院の特別室で、長い昏睡から青年が目覚める。医師に取り囲まれ、「自分の名前がわかるかね?」と聞かれた彼の耳に、「ジュン!」と優しく呼びかける女性の声がこだまする・・・。感想正月の深夜にテレ.. Weblog: 虎党 団塊ジュニア の 日常 グルメ 映画 ブログ racked: 2008-01-31 23:24