音楽探訪4 かぐや姫「神田川」 相手に優しくされるのが怖い

 「神田川」は自分が歌詞分析をするきっかけとなった曲です。作られて歌われていたのが私の学生時代のことであり、「同棲」という言葉が流行していた時代でした。かぐや姫のこの曲は、青春の甘くて切ないひとときの思いを清らかな哀切極まりないメロディで歌い上げた作品であり、オールドファンには今でも胸がじーんと熱くな.る曲です。
 この歌は、女性の立場になって、男性と同棲していた昔の思い出を綴ったものです。神田川が見える三畳一間の下宿に二人は暮らしており、一緒に風呂屋に出かけたものの、女の方が出るのが早く、いつも男を待つという設定です。「女の長風呂」という言葉がありますが、当時、男の長髪がはやっていた時期であり、男も髪を洗うのに時間がかかったという状況を考慮する必要があります。
 この曲のディテールがなかなか印象的で、赤いてぬぐいをマフラーにするところや小さな石鹸がかたかた鳴ったというところ、男が24色のクレパスで描いてくれた自分の似顔絵が少しも似ていないことなど、それぞれに現実感があります。
 しかし、この歌の極めつけは最後の歌詞です。昔を振り返っている「私」には何も怖いものはなかったと言い、「あなた」の優しさだけが怖かったと結ひせます。なぜ好きな相手に優しくされるのが怖いのか、私は疑問を持ちました。相手に優しくされるのは嬉しいと思いこそすれ、怖いと思うのはどういう心境でしょうか。
 これは同棲生活という不安定な状態の不安感の表れではないかと私は見ています。こういう幸せな生活がいつまで続くのか、その保証がないという思いが、相手に優しくされるのがかえって怖いという気持ちにつながったのではないでしょうか。二番の歌詞に「あなた」が「私」の指先を見つめて「悲しいかい」と尋ねる場面がありますが、同棲生活の侘しさ、悲しさ、はかなさがよく描かれています。
 あるいは相手に本当に愛されているのかという疑問もあるのかもしれません。あるいは相手にそれだけ愛される値打ちのある人間なのかという自分への問いかけもあったかもしれません。
 ともかく、不安定な状態にあったのは事実で、実際、この歌を歌っている「私」は「あなた」とは別れて月日が経っているのでしょう。それは「あなた」はもう忘れたのかと最初に呼びかけていることでも分かりますし、そこから昔の思い出に浸るという展開になっているわけです。。
 全体としてなかなかよく出来た、味わい深くて含蓄のある歌詞であり、いろいろと考えさせられましたし、昭和史を飾る名曲の一つでもあります。

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