漫画探訪21 手塚治虫「ブラックジャック」 法外な手術代を取る意味

 「白い巨塔」の財前教授にしろ、チャン科長にしろ、手術の名人ですが、手塚治虫の「ブラックジャック」もまた天才的な手術医です。しかし、彼らとは違うところは医師免許を剥奪されたもぐりの医者であり、法外な手術代を要求する点です。むろん、金をためる目的を彼は持っているという設定にはなっています。母親を植物状態にした犯人を突き止めるための資金にするというわけですが、彼が高い手術代を取るのはそのためばかりではありません。
 ブラックジャックは作品「落としもの」の中で、法外な手術代を患者に要求するのは、そのことによって患者に死ぬほどの苦しみを与え、病気を治してもらう喜びを患者自身に感じさせるためだというような意味のことを言っています。また「悲鳴」という作品の中では、死にものぐるいで病気を治そうとする患者が好きだとも述べています。患者が真剣に病気と向き合うことによって初めて、自己治癒力を引き出せるのであって、ブラックジャックは患者の真剣度を、高い手術代をふっかけることによってはかっているのです。
 「人生という名のSL」という作品において、彼の師である本間博士は、病気を治すのは本人であって、医者はそれを手助けしてやるだけだと言っています。それをブラックジャックなりの論理で推し進めたのが、法外な手術代であり、それが彼らしい哲学と言ってもいいし、彼独特の医者としてのモラルだという言い方もできるのではないでしょうか。
 それが証拠に高い手術代を取らない場合も往々にして見られます。「上と下」という作品では、人に輸血してしまったために倒産してしまった社長の手術代として10万円だけ受け取り、4990万円を返しています。「タイムアウト」という作品では、鉄材の下敷きになった少年を救い出した手術代として5000万円の代わりに可愛い風車だけをもらうという粋なはからいをしています。
 さらに「くもりのち晴れ」という作品では、3000万円使い込んで自殺を図ろうとした女性に、自分が稼いだ3000万円をぽんと与えています。「モルモット」という作品では、腎臓を病む少年の顔が、自分の小さかった頃に似ていることから、その子供が可愛がっていたモルモットをわざわざ手術してやっています。いずれも人情味あふれる彼の姿勢がよく現れています。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック