漫画探訪27 「ブラックジャック」7 命が助かって喜ぶキリコ

 作品「小うるさい自殺者」の自殺願望の少年は、尿毒症で瀕死の少女と出会い、彼女の苦しむ姿を目のあたりにすることによって命の尊さに気がつき、彼女を愛し始めます。少年はキリコの作った安楽死装置を破壊し、自分の腎臓を提供することで、彼女を救おうとします。彼はブラックジャックに手術を頼みますが、ブラックジャックの台詞もなかなか粋で余韻が深いものがあります。少女は重体で99パーセント助からないが、もし少年が二度と自殺をしないと誓ったら、残り1パーセントに賭けててみると、いささかキザな言い方ではありますが、自分の腕を信じ、医師としての使命感に燃えているブラックジャックの心意気が感じられる言葉です。
 「死への一時間」という作品では、キリコが所持していた安楽死の遂げられる飲み薬を、ニューヨークのちんぴら少年に奪われてしまいます。少年はその薬を心臓病に効くいい薬だと勘違いして、病気の母親に誤って飲ませてしまいます。1時間するとその母親は死んでしまうとあって、ブラックジャックは彼女の命を救うべく超人的な活躍をします。
 タイムリミットすれすれに、無事手術が成功して、彼女は一命を取り止めるのですが、その時、ブラックジャックはキリコに「どうだい大将、殺すのと助けるのとではどっちが気分がいい」と尋ねます。それに対して、キリコは「ふざけるな。おれも医者のはしくれだ。命が助かることに超したことはないさ」と答えて、命を救ってくれたブラックジャックに感謝します。
 キリコにしても、死なずに済む人間を死なせて嬉しいはずがありません。自分が持っていた薬のせいで、誤って人が一人死ぬということになれば、いつまでも罪の意識で苦しむことになるのでしょう。ブラックジャックの手術が成功した時、立ち合っていたキリコが「やった、やった」と叫ぶのも、医者として人間として素直に感動したからでしょう。
 何年も前にドクターキリコのハンドル名を持つ男がインターネット上で、自殺願望者に毒薬を販売する事件がありましたが、あのような行為は到底キリコの名に値しないことであることは、前回述べたことでも明らかです。恐らく、キリコもこの事件で自分の名が語られているのを知れば、大いに嘆いたに違いありません。医者としてのキリコの悩みにもっと耳を傾けてほしいものです。
 

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