石田三成の実像313 「直江兼続と三成」43 「天地人」のチーフ・プロデューサーの文章

 「歴史街道」6月号「直江兼続と石田三成 義を貫いて生きる」に描かれている三成の甲冑姿のイラストは「紅糸伊予札素懸威二枚胴具足」をもとにして描かれており、われわれがよく知っている天衝乱髪姿とは違います。「紅糸」の甲冑は石田多加幸氏の「石田三成写真集」にも載っているもので、紀州藩の砲術指南役の宇治田家に三成の甲冑として伝わり、さわると腹痛を起こすという口伝があるそうです。
 もちろん、兼続の甲冑姿のイラストは、「愛」の前立てを付けたものになっています。「天地人」のチーフ・プロデューサーの内藤愼介氏が「歴史街道」に「己の信念に殉じる潔さと切なさ」と題する文章を載せていますが、彼が三成に新鮮な興味を抱いたのは、関ヶ原の戦いの際、小早川秀秋の裏切りで西軍の負けが決定的になっても、石田隊たちの中には誰一人逃げ出す者が現れず、多大の敵に敢然と立ち向かったということからだと言います。三成が逃げる時間を稼ぐために家臣たちは突撃を行います。三成が自害しなかったのも、後に捕らわれて処刑される前にのどの渇きをいやすために差し出された柿を胆の毒だと断ったという故事も、自分が生き残ることは自分の身代わりに死んでいった者たちへの責務だと考えたからだと評しています。そういう三成の真摯な生き方が、「義」を貫いた兼続の生き方と通じるところがあると言いますし、その点では私も異論はありません。
 「天地人」の中で三成は頭は切れるものの周囲から誤解される人物として描かれていると述べていますが、落水の会のところがすでにそうでしたし、これからもそういう展開になってゆくことが予想されます。三成にもう一言でも説明があれば、周囲から誤解されずに済んだのにという場面もいろいろと用意されているような氏の書き方でした。秀吉の命令を忠実に守り、それを奉行として実行していったのは事実でしょうが、彼もその中でなんとか穏便にはかろうと苦労しているのが本当の姿でした。朝鮮の役批判もそうですし、秀次事件の際も、家臣たちを少しでも救おうと尽力し、事件後、秀次の家臣を召し抱えています。
 ドラマでは大勢に抗して正論を吐く兼続や三成の潔さが描かれ、視聴者は負けると分かっていても、裏切られると分かっていても、己の信念に殉じて生きた彼らの姿に切なさを感じるだろうと氏は言います。金や利などの見える価値に重きを置きがちな今の日本人に、信念や義理などという目に見えない価値を大事にした美しい生き方を見せたいという氏の希望が述べられており、三成の描き方に不満は残るものの、氏の姿勢には頭が下がる思いがします。

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