映画探訪20 「地雷火組」2 裏切り者なれどその娘への思いのために斬れない桂小五郎

 若い里見浩太朗が演ずる桂小五郎は、むろん実在の人物であり、「龍馬伝」にも登場していますが、かつての映画「地雷火組」で戸田重蔵の娘の夏絵と恋をするのは架空の話です。夏絵を演じているのは花園ひろみであり、時代劇には欠かせない女優でした。彼女は俳優の山城新伍と結婚しましたが、離婚し、その山城新伍も鬼籍に入りました。個人的には、山城新伍は子供の時に見た「白馬童子」の印象が強く、その正義の味方としての鮮やかな格好のよさが今でも目に焼き付いています。
 戸田重蔵は浪人だけに展望が開けず、幕府側と手を結び、勤王派の会議の日時と場所を密告してしまいますから、勤王派の志士たちは京都所司代の手の者や新撰組の隊員たちの襲撃を受け、勤王派は多くの犠牲者を出しました。むろん、これはフィクションであり、池田屋事件のもじりでしょう。桂小五郎や澤地与四郎は得意の剣のおかげで脱出を遂げますが、その過程で戸田重蔵が敵の者に厚遇されるところを見てしまい、戸田が裏切り者であることが分かってしまいます。しかし、幕府側が襲撃の場所で堂々と戸田をもてなすというのは、いかにも映画的であり、このような見え見えなことはありえない話です。もっとも、戸田はもう今の場所には住めないということで、京都所司代の屋敷に移り住みます。父親が長州藩を裏切ったのを知った夏絵は悲しみますが、それは桂小五郎への思いがあったからでもありました。桂小五郎は戸田の裏切りを許せないと、京都所司代の別邸まで乗り込んでいきますが、一人で飛び込むのも無茶な話であり、桂小五郎はもう少しのところで戸田を討って仲間の仇を討とうとしますが、夏絵は父親を守るべく愛する小五郎に鉄砲を向けます。しかし、小五郎を撃てるはずはなく、小五郎も一旦は戸田を討つのをあきらめ、その場から逃れます。
 桂小五郎が夏絵への思いから戸田重蔵を殺せないのは、観客にも明らかであり、映画で実際戸田を討ち果たしたのは澤地与四郎でしたが、籠に乗って所司代の人々に守られて行列でゆくのを一人で簡単に近づき、籠の中にいる戸田を一突きで殺してしまうのも、ありえない話です。これも桜田門外の変を念頭に置いた演出でしょうが、この桜田門外の変の場合は、たくさんの水戸浪士たちが襲撃しましたから、規模が違いますし、井伊直弼は鉄砲で撃たれて瀕死の状態になり身動きが取れなかったと云います。澤地は戸田を討ち果たすのみならず、たやすくその場から逃げ出し追っ手も巻いてしまうのですから、これもおかしいと云えば云えます。
 夏絵は自分の父親が暗殺されたことを知って衝撃を受けますが、さらにそれが自分の愛する桂小五郎のしわざで゜はないかと思って余計に心を痛めます。しかし、それが澤地のしたこととやがて知り、一安心するという展開です。二人の関係にひびが入らなかったという描き方ですが、実際の桂小五郎は芸者の幾松と関係が深く、後に彼女を正式な夫人にしています。

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