フランス文学探訪75 「チボー家の人々」2 権威主義的な父、再度家出するジャック  

 アントワーヌとジャックの父親であるオスカールは敬虔なカトリック教徒であり、学士院会員を始めとして法学博士、県選出代議士、パリ司教管区カトリック事業委員会名誉総裁など数々の肩書きを持つ名士でした。彼は息子のジャックが家に戻った後も反抗的姿勢が変わらないのを見て取り、自分が経営する少年の更正施設に入れてしまいます。アントワーヌはジャックの様子を見に行きますが、監禁と懲罰によって、精神的な自由を奪われ、無気力に陥っている姿を知って、これではかえって本人のためにならないと、父親に直談判して、自分の責任において面倒を見るという条件で、救い出すことに成功します。この更正施設に顕著に見られるように、父親の態度は常に権威主義的で、ジャックがそういう父親の姿勢に、我慢ならなかったのもうなずけます。更正施設や刑務所が、今も旧態依然として懲罰主義を貫いているのは、昨年、名古屋刑務所の刑務官が受刑者虐待で逮捕されたことでもよく分かります。
 ところで、ジャックは後に、フランスでは最高に難しいとされる高等師範学校に合格したにもかかわらず、入学せず再び家出をしてしまうことになります。これは直接的には、ジャックが二人の女性との恋の板ばさみになったことや父との言い争いに起因していますが、既成のものを学ぶことに対する根本的な懐疑があり、自分のやりたいことを突き通すために入学を拒否し、各地を転々とした後、スイスで文筆活動に励むことになります。
 ジャックと一緒に家出した親友のダニエル、その妹のジェンニー、プロテスタントで信仰をよりどころにしているその母親、女性との関係が絶えないその父親などのフォンタナン家との交流を始め、さまざまな人物がチボー家と関わり合いを持って来ますが、そのあらすじを紹介するだけでも膨大な量になりますし、煩雑でもありますので、省略します。ただこのジェンニーはジャックが恋の板ばさみになった片方の女性であり、いま一人の女性はチボー家の養女になったジゼールです。
(2003年03月02日 公開)

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