フランス文学探訪100  フローベル「ボヴァリ-夫人」1 ロマンに憧れた夫人の悲劇 

 何ヶ月かかけてこの作品を原書で読みました。何度目かの読書ですが、久しぶりでしたので、新鮮な思いで読み続けることができました。
 フローベルは1821年にルーアンで生まれました。父親は市立病院の外科部長でした。フローベルは中学生の時から文学に熱中し、数々の習作を書いています。19歳の時にパリ大学の法学部に入学しますが、籍を置いていただけで、結局、法律の勉強は断念して、文学に専念するのです。
 彼が友達からリー町の開業医ドラマール夫人の事件を書くように勧められたのが27歳の時であり、それを素材にして「ボヴァリー夫人」を書き始めたのがそれから2年後、完成させたのが、それから5年後でした。
 この小説は写実主義の代表作と言われ、後世の作家たちに多大の影響を与えてきました。モデルとなったトラマール夫人は、不倫を働き、借金の末自殺しましたが、この小説も、大筋はそういう内容になっています。しかし、細部は作家のオリジナルであり、想像力を駆使して、独自の世界を展開しています。フローベル自身、この小説を書き上げるのに苦心惨憺しており、半ページ書くのに丸一日を費やすこともあったほどでした。
 作者はボヴァリ-夫人というヒロインを、文学好きで、小説に出てくるようなロマンに憧れる女性として設定していますが、それは彼女だけのことではなく、当時の女性なら大なり小なりそういう夢を描いていたのではないでしょうか。そこに普遍性があり、彼女に自分を投影する読者は少なくなかったはずです。不倫にまで発展したことには、眉をひそめたにしても、心の奥に潜む願望をフローベルが白日の下にさらけ出したことに、共感めいたものを覚えたに違いありません。
(2004年04月24日 公開)

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