関ヶ原の残党、石田世一の文学館

アクセスカウンタ

zoom RSS フランス文学探訪92 カミュ「異邦人」5 主観的な時制である複合過去形で綴った小説  

<<   作成日時 : 2019/05/06 00:04   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 0

 この小説はフランス語としてかなり特異な文体で描かれています。日本語でも普通、小説は過去形で書かれますが、この点ではフランス語も同じです。ただ、フランス語には単純過去形と複合過去形の二つがあり、小説の時に使われるのは単純過去形が一般的です。これは過去の動作を客観的に述べるものであり、現在とは関係のない、完全に過ぎ去った過去の行為を述べるものです。それに対して、複合過去形は過去の行為や状態を、語り手の経験した事実として述べるものであり、言ってみれば主観的な時制です。
 カミュは敢えて複合過去形という新しいやり方で小説を綴ってゆきました。複合過去形は主観的なものですから、日記や手紙でよく使われ、筆者が目撃した事件を物語るのにふさわしく、生々しい印象を与えることができます。ムルソーの日記という色合いが濃いこの小説に、複合過去形は合致しています。
 さらに、カミュは原因を表わす接続詞などをあまり使わず、ぽつぽつと切れた文章で全体を綴っています。ある研究家はこの「異邦人」の文体を「スタッカート」という音楽用語で表わしていますが、文章が一つ一つ切れて前後の関連性が薄いことを言っているのでしょう。
 複合過去形を用いたことも、一つ一つの行為を読者の前に示すことに効果的であり、両者あいまって瞬間瞬間のムルソーの行為を描き出しているのです。これはこの小説のテーマとも大きく関わってきます。ムルソーは前述したように、自分の感情に従って、瞬間を生きています。社会の慣習に縛られず、自分を偽らず、その時その時の思いのままに時間を過ごしました。それが一般の人から見たら、常識がない、人間性のかけらもないというふうに見なされたわけです。
(2003年07月29日 公開)

テーマ

注目テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
フランス文学探訪92 カミュ「異邦人」5 主観的な時制である複合過去形で綴った小説   関ヶ原の残党、石田世一の文学館/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる