
松柏美術館に展示されていた、上村松園の「花がたみ」は、一番インパクトがありました。謡曲「花がたみ」に基づいた日本画で、継体天皇を愛するあまり精神を病んでしまった照日の前の姿を描いていますが、虚ろな目の表情がなんとも鬼気迫っていました。松園はこの絵を描くために、精神病院に泊まり込み患者の様子を観察しましたから、この絵に対する気迫や執念みたいなものがうかがえ、その思いがこの絵にこもっている気がします。むろん、今はそういうことはできないでしょうが。

今回の展覧会のチラシに掲載されているのは、松園の美人画「鼓の音」、松篁の「月明」、淳之の「初めての冬」(描かれているのは子狐)です。松篁は自分のアトリエに鳥小屋を作り、たくさんの鳥を観察し、それを絵に活かしましたが、その鳥小屋は息子の淳之にも受け継がれました。その鳥小屋での写真も、館内に展示されていました。

松柏美術館の館内からの外の眺めも、大淵橋や大淵池も見えて趣きがあります。



松柏美術館は、故佐伯勇近畿鉄道株式会社名誉会長の邸宅の敷地に建っています。旧佐伯邸も残っており、門や茶室もありますが、非公開のようです。松柏の「松」は、松園・松篁の名前と庭園の松林、「伯」は画伯と佐伯、茶室「伯楽亭」にそれぞれ由来しています。
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