漫画探訪23 手塚治虫「ブラックジャック」3 少年の時に本間博士に命を救われた体験

 「ブラックジャック」は20ページから30ページぐらいの短編ばかりで、全部で240編ほどあります。主人公がどういう人生を歩んで来たかは、個々の作品に少しずつ散りばめて語られており、全部読み通せば分かる仕組みになっています。そのあたりが手塚治虫の偉いところですし、彼の頭の中には、初めから主人公の全体像がおおよそ出来上がっており、それらを小出しにして作品を書き続けていきました。
 ブラックジャックの本名は間黒男(はざまくろお)。黒だからブラックであり、ジャックの方は英米の男の一般的な名前です。彼は少年の時に不幸な事故が起こりました。彼の家に埋まっていた不発弾が爆発し、彼の母親は手足をもぎ取られ、下腹に穴があき、のどから栄養と酸素を流し込まれ、声も出せない姿になりました。
 黒男はほとんど死にかけていましたが、本間丈太郎の何回にもわたる手術で奇跡的に命が助かりました。頭蓋骨も顔も手足も崩れ、内臓も損傷を受けていたのを本間博士は手術でつなぎ合わせたのです。ブラックジャックの体に無数の傷跡があるのはそのためであり、彼の顔の皮膚の色が左右で違うのは、この時、黒人と東洋人のハーフであるタカシ少年の皮膚を彼の顔に移植したからです。他の少年たちが皮膚の提供を拒んだのにタカシだけが引き受け、ブラックジャックは彼をかけがえのない友達だと思い感謝します。
 タカシは後年、アフリカで地球の自然を守る運動に参加しますが、ブラックジャックが人間の病気を治すのに対して、彼は地球の病気を治そうとしており、この点でも二人は兄弟同然とも言うべき関係だったわけです。タカシは残念ながら、原子力推進派に暗殺されて若い命を落としてしまいます。
 ブラックジャックの髪が白くなったのは、この爆発事故の恐怖によるものです。銃殺される寸前の人間の髪の毛が恐怖のあまり、一瞬にして白くなったということを、それを目撃したドストエフスキーも記していますが、少年のブラックジャックもそういう極限状況に置かれました。
 命は助かりましたが、手足が動かず車イスの生活をしばらく送ることになります。血のにじむような歩行訓練をして、彼はようやく歩けるようになりますが、本間博士はそこまで彼の面倒を見てくれました。ブラックジャックが医者を目指すようになったのは、本間博士に命を救われたという体験から来ています。

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