フランス文学探訪60 バルザック「従妹ベット」1 玉の輿に乗った従妹に仕返しようとパリに来るヒロイン

 この小説は1838年から46年にかけての、およそ8年間にわたる話です。ヒロインはベットですが、ユロ男爵が陰の主役と言ってもよく、彼のどうしようもない愛欲がテーマだと言っても過言ではありません。ハッピーーエンドになるのかと思わせておいて、それがどんでん返しになります。
 ベットはロレーヌの貧しい農民の娘であり、彼女の従姉のアドリーヌが美貌に恵まれ、小さい時から自分が犠牲にされてきたのを根に持って、ユロ男爵と結婚して玉の輿に乗ったアドリーヌに仕返しをするべくパリに出てきます。アドリーヌは貞淑な妻であり、ユロ男爵に尽くしますが、彼の方は女性関係が絶えず、歌姫のジョゼファとも関係を持ちます。ジョゼファは金持ちのクルヴェルの愛人でしたが、ユロが奪い取ってしまいました。クルヴェルはその仕返しに、アドリーヌにユロの色恋沙汰を暴露して、彼女に言い寄ろうとします。
 この小説はその言い寄る場面から始まります。クルヴェルの娘とユロ男爵の息子とが結婚しているのですから、クルヴェルがアドリーヌに言い寄るのはもってのほかのことですが、この男もまた愛欲にとらわれた俗物として登場し、ユロ男爵といいコンビで、敵同士で女を巡って互いに張り合います。むろん、アドリーヌはクルヴェルをはねつけます。
 ベットは自分のアパートで、生活に困っていたポーランドの亡命貴族のシタインボックを助けて面倒を見ます。そのベットの話をアドリーヌの娘のオルタンスが聞いて、シタインボックに関心を持ち始め、やがて相思相愛の仲になり、二人は結婚してしまいます。こういう展開はベットにとってはたまったものではありませんでした。彼女もまたシタインボックに思いを燃やしていましたが、彼はベットを姉のようにしか見ていませんでした。このことでもベットは復讐を誓い、アドリーヌ及びオルタンスへの攻撃が開始されます。ベットがそういう思いを持っていることは、アドリーヌはじめ一家の者は誰も気づきませんし、最後までそうです。
 客観的に見れば、スタインボックをオルタンスがベットから奪ったわけですから、オルタンスももう少し罪の意識を持ってもいいはずなのですが、不思議なことに、それは全く見られません。そのあたりはお嬢さんだからでしょうか。ベットの悔しさの方が、読者にはぐっと伝わり、彼女がどす黒い心を持つのも当然という気がしてきます。
 さて、ここにヴァレリーという男を手玉に取る魅力的な女性が登場します。彼女にはマルネフという陸軍省官吏の夫がいるのですが、多分にヒモ的な存在です。ヴァレリーとベットは意気投合し、二人で結束してユロ男爵家を陥れようと共同作戦に出ます。ヴァレリーはユロに近づき、たちまち彼の心をとりこにしてしまいます。さらにシタインボックを誘惑して、オルタンスと別居状態にしてしまいます。クルヴェルも彼女の魅力にとりつかれ、彼女は三人の男を自由に操ることになりますし、それに一役買うのがベットです。
 

"フランス文学探訪60 バルザック「従妹ベット」1 玉の輿に乗った従妹に仕返しようとパリに来るヒロイン" へのコメントを書く

お名前
ホームページアドレス
コメント

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。