漫画探訪41 手塚治虫「火の鳥・望郷編」1 子孫を残すために人工冬眠をする女性

 久しぶりに手塚治虫の漫画「火の鳥・望郷編」を読み直しました。「火の鳥」シリーズの第6巻に当たりますが、今でも十分読み応えのあるSFものです。まずいきなり火の鳥が登場しますが、自分の本体は宇宙にみなぎった生命のエネルギーのちょっとしたかたまりであり、人間の目から見て鳥に見えるだけだと語ります。手塚治虫はフェニックスや鳳凰の話にヒントを得て壮大な「火の鳥」の物語を紡ぎ出しており、そのスケールの大きさ、その発想の豊かさには驚嘆させられます。
 この作品の舞台は大半が「エデン17」という星であり、その星に移ってきたのは、小さな島で育ったロミと、大学の研修生の丈二でした。二人は島で恋に陥りますが、その島を人工島にして100万人の人間を移住する計画があるのを知り、丈二は島の改造予算10億円を盗み出し、二人はロケットで地球を脱出します。
 地球の人口が爆発的に増えるという近未来的な予測のもとに、この作品が作られているわけですが、実際、今から100年も経てば、地球を飛び出さなければにっちもさっちもいかない状況になりかねません。もっとも、これは他の星に住めるだけの技術が生み出されると仮定しての話であり、それがかなわないとなれば、人類の未来はどうなるのかと危惧の念を持ちます。
 二人は宇宙不動産屋から一つの星を買いますが、それが「エデン17」でした。宇宙不動産屋という発想も斬新ですが、悪徳不動産屋であり、ロミと丈二は不動産屋にいい星だと騙されていたことがすぐに分かります。水も干上がっており、地震が多発する星であり、先住者たちも滅びていたことも知ります。この星の親星は土星のような輪がついており、地球ではなく遠い星だと感じさせます。手塚作品はディテールがよく出来ていますが、これもその一端です。
 丈二もまたその地震の犠牲者になり、ロミと二人の間の子供であるカインが後に残されます。ここでロミは子孫を残すべく、奇抜な手段を取ります。自分が20年間人工冬眠をして、大人になったカインと結婚し、子供を作ろうとしたのです。近親相姦であり、本来許されない手段ですが、この星には二人しかいず、そうするしか仕方なく、究極の選択だと云えます。
 カインはロケットの「知識の塔」のテープ(このあたりは時代性を感じさせますが)を聞いてさまざまなことを学んで育ちます。手塚治虫の短編「ふたりは空気の底に」でも、世界が核兵器で滅びた後、カプセルの中で赤ん坊の男女が育って若者に成長していきますが、2人が知識を得ていたのはカセットの画像によってという設定であり、画像と音声の違いはありますが、共通するところがあります。
 人工冬眠から戻ったロミは、実際、大人になったカインと一緒になります。二人の間には7人の男子が生まれますが、カインはまたもや地震の犠牲になり、下半身が駄目になってしまいます。カインは再びロミに人工冬眠するように促しますが、この星には女性はロミしかいないのですから、これまた仕方がなく取った方法です。ロミの運命は過酷なものですが、生々しさや毒々しさは感じられず、ロミの生命力に圧倒される思いです。

"漫画探訪41 手塚治虫「火の鳥・望郷編」1 子孫を残すために人工冬眠をする女性" へのコメントを書く

お名前
メールアドレス
ホームページアドレス
コメント

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。