テーマ:フランス文学探訪

フランス文学探訪102  フローベル「ボヴァリ-夫人」3  結婚生活に失望・男と女の意識のずれ 

 ヒロインのエンマが結婚生活に失望するまで時間はかかりませんでした。夫はなんでも知っており、情熱の力や生活の技巧など、いろいろと教えてくれる存在だと彼女は信じていたのに、夫のシャルルはそういう理想とは全く違う人物だったからです。話は平凡だし、演劇にも行かず、剣も銃も扱えず、馬術も水泳もできず、がっかりさせられてばかりでした。しかし、シャ…
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フランス文学探訪101 フローベル「ボヴァリ-夫人」2 最初は年上の女性と結婚するボヴァリー 

 「ボヴァリ-夫人」という題が付いているものの、主人公は夫のシャルル・ボヴァリ-であり、彼の学校時代の描写からこの小説は始まります。転入生として教室に入ったものの、へまをしでかしてみんなの嘲笑を買うというみじめな姿が、まず描かれます。肝心のボヴァリ-夫人がなかなか登場しないという不満を昔は覚えたという記憶がありますが、お人よしで他人のこ…
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フランス文学探訪100  フローベル「ボヴァリ-夫人」1 ロマンに憧れた夫人の悲劇 

 何ヶ月かかけてこの作品を原書で読みました。何度目かの読書ですが、久しぶりでしたので、新鮮な思いで読み続けることができました。  フローベルは1821年にルーアンで生まれました。父親は市立病院の外科部長でした。フローベルは中学生の時から文学に熱中し、数々の習作を書いています。19歳の時にパリ大学の法学部に入学しますが、籍を置いていた…
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フランス文学探訪99 サガン「ブラームスはお好き?」2 恋人の浮気心は改まらず、主人公も孤独のまま

 ポールとシモンは一緒に暮らすようになりますが、ポールはロジェのことが忘れられません。それに周囲の者の目も気になります。ポールが若い男と付き合っていることで、人から嫌味を言われ、傷つきますし、こんな関係がいつまで続くのかと将来に対して不安を覚えます。ロジェも付き合っている映画女優からシェリー(いとしい人)と呼びかけられ、相手にそう呼ばれ…
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フランス文学探訪98 サガン「ブラームスはお好き?」1 恋人がいながらも孤独を感じる39歳の女性 

 この小説のヒロイン、ポールは39歳、室内装飾の仕事をしています。彼女には40過ぎのロジェという恋人がいますが、自由を楽しんでいるのは彼だけで、彼女自身は孤独を感じています。それもそのはずで、ロジェは彼女の部屋に泊まることはせず、別の女性とのアバンチュールを楽しむ遊び人です。彼女は自分を必要としてくれる男を求めていましたが、そんな時、室…
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フランス文学探訪97  モーパッサン「手」2  手が襲うところを描写しないだけに、想像がふくらむ効果

 人間の手による犯行というのは、いかにも怪奇小説らしい趣きを備えています。ありえない話をいかに、本当らしく思わせるかが、作者の腕の見せどころですが、襲うところは全く描写せず、結果だけで示しているのが、ミステリアスで想像をたくましくさせます。手が這いまわっているところも、夢の中でしか出て来ませんし、墓の上で手が発見されたというラストシーン…
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フランス文学探訪96 モーパッサン「手」1  幻想的な小説・壁につながれた手による殺人

 モーパッサンが幻想的な作品を数多く書いていることはあまり知られていないかもしれません。この「手」という作品を知ったのは、小説ではなく、ラジオドラマでした。  この作品も、予審判事がみんなに不思議な話を語るという形式を取っています。場所はナポレオンが生まれ育ったコルシカ島です。この島は復讐の血で染まっていると予審判事は述べますが、事…
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フランス文学探訪95 サルトル「水いらず」「部屋」 人間の生理的、肉体的な面を強調 

 「水いらず」は短編集「壁」に入っている作品ですが、至って単純なストーリーであり、女主人公のリュリュが、性的不能の夫の元を飛び出して、恋人のところに走るものの、また戻って来るというだけの話です。性的な描写が物議を醸し出した作品ですが、彼女は「人間になぜ体なんかがあるのだろう」とつぶやき、人間の体に嫌悪感を抱きます。人間の生理的な部分に注…
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フランス文学探訪94 サルトル「嘔吐」2 実存主義的なものの考え方・事物存在とは根本的に違う人間存在

 人間の存在は事物の存在とは根本的に違うということにサルトルは思い至りました。そのことを「実存は本質に先立つ」という言い方で彼は言っています。これを椅子という例で言いますと、椅子がどういう形をして、何のために使うものかというイメージ・概念をわれわれは持っています。それが椅子についての本質というものです。  ところが、人間という存在は…
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フランス文学探訪93 サルトル「嘔吐」1 事物が存在しているのは偶然だと知る 

 サルトルは1905年にパリで生まれました。高等師範学校を出ると、教授資格を取り、高等中学校で教えました。36年に「想像力」という哲学書を出版し、翌年に短編小説「壁」を雑誌に掲載し、さらにその翌年に小説「嘔吐」を出版しています。彼の活動は、哲学書・小説・戯曲と多岐にわたっていますが、彼の唱えた実存主義がいずれの作品にも色濃く表れています…
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フランス文学探訪92 カミュ「異邦人」5 主観的な時制である複合過去形で綴った小説  

 この小説はフランス語としてかなり特異な文体で描かれています。日本語でも普通、小説は過去形で書かれますが、この点ではフランス語も同じです。ただ、フランス語には単純過去形と複合過去形の二つがあり、小説の時に使われるのは単純過去形が一般的です。これは過去の動作を客観的に述べるものであり、現在とは関係のない、完全に過ぎ去った過去の行為を述べる…
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フランス文学探訪91 カミュ「異邦人」4 孤独に生き死んだ主人公・小説「ペスト」とは対照的

 カミュ自身が、このムルソーの生き方を肯定しているわけではありませんし、私ならずとも、母親の年も知らず、死んだ母親の顔も見ようとしなかったことや、愛もなく女性との関係を続けていることや、あげくの果ては自分とは何のかかわりも持たない相手に対して、銃を何度も撃って死に至らしめる彼の行為を是認できるはずはないでしょう。カミュも意図的にこういう…
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フランス文学探訪90 カミュ「異邦人」3  「不条理の文学」・自然のままに生きる主人公 

 この小説は「不条理の文学」と呼ばれています。毎日同じようなことを繰り返している生活に空虚と倦怠を感じている人の意識を「不条理の意識」と作者は規定しています。ムルソーもその一人であり、彼はありのままに生きようとして、それが社会と確執を起こし、殺人行為によって、断罪されるのです。自然のままに生きようとすることがいかに難しいかを表わした作品…
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フランス文学探訪89 カミュ「異邦人」1 太陽のせいで人を殺したと言う主人公 

 アルベール・カミュは1913年にアルジェリアで生まれました。彼が1歳の時、父が死に、アルジェという町で母と共に貧困の中で育ちました。「異邦人」の舞台もアルジェです。カミュはアルジェ大学を出た後、職を転々としていますが、やがてアルジェやパリで新聞記者になり、詩的エッセイを書くなどして文学活動もしています。第二次世界大戦の折には、ドイツに…
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フランス文学探訪88 ジイド「法王庁の抜穴」4 ドストエフスキイの影響・人間の奥底に潜む闇   

 ラフカジオの人物造型には、多分にドストエフスキイの影響があると思われます。ドストエフスキイをフランスに初めて紹介したのは、ジイドでしたし、ラフカジオと「罪と罰」のラスコーリニコフには共通点があります。両者共に殺人を犯します。ラスコーリニコフの方は、英雄には人を殺す権利があり、自分がそうであるかを確かめるために、金貸しの老女を殺すのです…
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フランス文学探訪87 ジイド「法王庁の抜穴」3   「動機なき殺人」が最大のテーマ

  この小説の最大のテーマは「動機なき殺人」ですが、衝動的に殺したのがラフカジオに全く無関係の人物ではなかったことが後で分かりますし、夢のような気持ちで人を殺して以来、悪夢の中で彼はもがき苦しむようになります。ラフカジオは首尾一貫しないのが人間であるとの持論を持ち、小説に不満を持っているのは、主人公が作家の主張通りに行動してゆく、すなわ…
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フランス文学探訪86 ジイド「法王庁の抜穴」2  絡み合い、錯綜した人間関係

 第一章では、無神論者の秘密結社員アンテムが動物実験三昧の生活を送っていたのに、ある時、聖母の像に乱暴を働き、その夜、聖母が夢に現れたのをきっかけにして、自分の足が治るという奇跡が起こります。彼はそれで信仰心が芽生え、カトリックに帰依しますが、教会の援助は得られず、破産同然の身の上になります。   第二章では、アンテムの義弟の作家ジュ…
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フランス文学探訪85 ジイド「法王庁の抜穴」1 リアリズム小説からの脱却・作品への「私」の介入 

 「法王庁の抜穴」は以前は文庫で出ていましたが、今は本を手に入れるのが難しいのではないでしょうか。この作品を取り上げたのは、個人的なことになりますが、大学の卒論で取り上げたからです。もっとも、卒論ではもう一作「贋金つかい」にも少し触れてはいますが。「法王庁の抜穴」の内容に入る前に、卒論のテーマを少し述べておきたいと思います。  二十…
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フランス文学探訪84 ジイド「田園交響楽」2  カトリックと新教

 牧師は新教であるのに対して、ジェルトリュードは、牧師の息子のジャックの勧めに従って生前、カトリックに改宗していました。カトリックと新教の問題はなかなか難しいのですが、ジャックが改宗したのは、父親に対する反発ゆえのことだと思われます。カトリックでは罪悪観が厳しく、それに対する批判がこの小説には込められている気がします。あまりにも罪という…
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フランス文学探訪82 ジイド「狭き門」2 信仰の犠牲になった二人・作者の苦悩が反映 

 相思相愛の者同士がどうして結ばれないのか、読むたびにもどかしい思いがする作品です。無宗教の私などは、アリサは信仰の犠牲になったのだと、単純に考えてしまいます。現世の幸せを求めず、天上の愛にすがろうとするのは美しいことだとはいえ、主客転倒しているような気がしてなりません。  このアリサにはモデルがあって、ジイドが結婚したマドレーヌと…
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フランス文学探訪81 ジイド「狭き門」1  恋人の信仰の邪魔をしているのが自分だと思い身を引く女性

 アンドレ・ジイドの小説の中で一番有名なのが、「狭き門」でしょう。今でも難関大学などに入るのは「狭き門」だという言い方をします。もともと聖書にある言葉で、「力を尽くして狭き門より入れ」というキリストの言葉から来ています。信仰に入る道がいかに困難かを述べた言葉です。  この小説の語り手はジェロームという青年ですが、彼は二つ年上のいとこ…
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フランス文学探訪80 「チボー家の人々」7 アントワーヌの安楽死・国際機関の必要性  

 アントワーヌは最後まで宗教にすがることはせず、司祭の言葉も受け入れませんでした。体が衰弱し、声も出なくなり、ベッドから立ち上がることもできなくなった時、最後の力を振り絞って自分に安楽死の注射を打ったのです。時に1918年11月。第一次世界大戦終戦間際のことでした。  彼の最後の日記は、自分が死ぬまでの病状をつぶさに語っており、臨床…
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フランス文学探訪79 「チボー家の人々」6 アントワーヌの残した日記・チボー家の跡取りへの忠告  

 アントワーヌが最後に残した日記が、小説のラストを飾ることになるのですが、これがなかなか奥深い内容になっています。彼は自分の命が残り少ないことを自覚していますし、医者として、自分の体の状態を誰にもましてよく分かっているのです。彼はそれまで自らを誇り、精力的にばりばりと活動してきただけに、病気の自分との落差を覚えて、最初はショックを受けま…
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フランス文学探訪78 「チボー家の人々」5  戦争が変えた兄弟の運命 

 ジャックはジェンニーをパリに残したままスイスに帰りますが、使命感はかえって高まり、戦争が始まってからも、反戦を呼びかけるビラを双方の前線に配るべく、仲間と飛行機に乗り込みます。  しかし、その飛行機が事故を起こして墜落し、操縦士は死に、ジャックは重傷を負います。フランスの兵士たちはジャックをスパイと見なし、彼を担架に乗せて運びます…
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フランス文学探訪77 「チボー家の人々」4 第一次世界大戦前の反戦運動と頓挫

 この大河小説は「1914年 夏」という部分が突出して異様に長く、小説を前半・後半に分けた場合、その後半の大部分を占めており、いかに作者がこの部分に重きを置いていたかが分かります。この年の夏と言えば、第一次世界大戦が勃発した時であり、この小説はその前後のことを日に追って実に克明に描いています。  一番の驚きは、みんなが戦争に賛成したわ…
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フランス文学探訪76 「チボー家の人々」3  悶え苦しむ父を安楽死させた医師アントワーヌ 

 父親のオスカールはジャックが自殺したと思い込んで体調を崩し、やがて寝たきりの生活になり、余命いくばくもない状態になってきます。その最期の姿はなんともすさまじく、見苦しいものでした。死を前にして、今までの信仰は何の役にも立たず、司祭の慰めの言葉も拒むほどでした。今までの彼の信仰が本物ではなかったという証拠ですが、司祭に模範的な死を迎えた…
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フランス文学探訪75 「チボー家の人々」2 権威主義的な父、再度家出するジャック  

 アントワーヌとジャックの父親であるオスカールは敬虔なカトリック教徒であり、学士院会員を始めとして法学博士、県選出代議士、パリ司教管区カトリック事業委員会名誉総裁など数々の肩書きを持つ名士でした。彼は息子のジャックが家に戻った後も反抗的姿勢が変わらないのを見て取り、自分が経営する少年の更正施設に入れてしまいます。アントワーヌはジャックの…
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フランス文学探訪74 「チボー家の人々」1 理性的な医者の兄と、反逆児の弟を軸とした大河小説 

 この三月末で、「ヤフー」のホームページサービス「ジオ・シティーズ」が閉鎖されましたが、そこに掲載していた「フランス文学探訪」の方も拙ブログで順次紹介してゆきたいと思います。  大学時代にフランス文学を専攻していた時は、フランス文学はまだまだ輝きを放っていたのですが、現在では勢いが衰え、出版されている文庫本や単行本の数は大幅に減…
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フランス文学探訪73 モーパッサンの小説「ジュール叔父」2 金持ちだったはずの叔父が牡蠣を剥いて売る

拙ブログ5月27日付記事「モーパッサンの小説『ジュール叔父』」の続きです。  姉の結婚式の後、家族みんなで船に乗り込み、沖にある英国領のジャージー島に旅行に行きます。お金のない彼らにとっては、そこが船に乗って2時間で行ける手近な海外旅行先であり、みんなはそれを楽しみにしていました。家族みんなで新婚旅行に行くというのも面白いですが…
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フランス文学探訪72 モーパッサンの小説「ジュール叔父」1 見栄を張って日曜に正装する貧しい一家

 フランス語でモーパッサンの小説「ジュール伯父」を読み直しました。「ジュール伯父」を初めて読んだのは、中学校時代の国語の教科書においてでしたが、「牡蠣」の殻を剥いている場面と、貧しい一家が日曜日は見栄を張って正装して出かけるところが、妙に強い印象になって残っています。今回読み直してその時の思いがまた蘇りましたし、やはり短編の名作である…
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