漫画探訪6 アンパンマン分析6 「手のひらを太陽に」の歌詞

 やなせたかし氏は、「手のひらを太陽に」の作詞者でもあります。この歌詞には生きているものすべてに対する暖かい目が現れており、生きているのは人間だけでなく、みみずもおけらも同じであってみんな友達だと言っています。人間だけが素晴らしく、他の生物のことはかえりみない人間至上主義とはおよそ正反対の考え方であり、それは生けとし生けるものすべてに仏性が宿っているとの仏教的な捉え方と共通するところがあります。その点で、すべての生物を平等に見ていた手塚治虫の姿勢に通じるものがあり、両者は生物すべてに対する深い愛を持っています。
 手のひらを太陽に透かしてみたら血が赤かったというところは特に印象的ですが、この歌詞が作られるに当たっては作者にもっと深刻な体験があったことを、これも去年の新聞記事で初めて知りました。他の漫画家仲間が売れているのに、自分だけ取り残され落ち込んでいた時に、懐中電灯を手にかざしていたら血が透けて赤く、悲しいのも生きている証だと感じ取ったと言うのです。そのマイナスを見事にプラスに転化したのがこの歌であり、人々に生きる勇気と力を与えてくれました。その精神が「アンパンマン」にも受け継がれています。
 やなせ氏がこの歌詞を作ったのは43歳の時であり、「アンパンマン」ブームが巻き起こったのは70歳近くになってからのことでした。まさに遅咲きの桜であり、50歳を過ぎてから各地を歩き始めて日本地図を作った伊能忠敬などと同じように、人間いくつになってもチャレンジできるのだという希望をも与えてくれる人です。
 作者自身、自分のことをのっそりのっそり行くかたつむりだと言っており、かたつむりのことを詠んだ詩もあります。自分より9歳も年下の手塚治虫が若いときから第一線で活躍し、数多くの作品を書きながら60歳でなくなったのと大きな違いです。手塚治虫がなくなったことで未完のままで終わっている作品もいくつかあり、死ぬ半年ほど前のインタビューでも、自分の頭の中にはまだいっぱいアイデアが詰まっていると述べていましたが、それが日の目を見ないままになっているのがなんとも惜しまれます。やなせ氏にはもっともっと長生きしてほしいものです。

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