漫画探訪12 「手塚治虫作品における悪の系譜について」2 「バンパイヤ」のロック

 「バンパイヤ」のロックこと、間久部緑郎はパンパイヤたちと組んで、世界を征服しようと考え、自分の野望を満たすべく、殺人も平気で行ってしまいます。バンパイヤとは、狼男のように、普段は人間の姿をしていますが、何かの条件を満たすと、動物に変身するという種族です。バンパイヤたちに革命を起こさせ、人類を動物に戻そうというロックの目論見は寸前のところで阻止されるのですが、この漫画もハッピーエンドではありません。
 ロックは生き残り、第二部で再び活躍します。カメレオンのように、人間にでも何にでも変身する動物を見い出して、彼らを自由に操り、またも世界征服を企みます。残念ながらこの作品は未完であり、結末がどうなるかは示されていません。最大の謎である、ロック自身がバンパイヤであったのかどうかも解明されないままです。これはロックの悪魔的な部分がどこから生まれているのか知る上で、重要な点なのですが、明らかにされていないのが心残りです。
 ロックの正体があいまいであるとは言え、手塚はロックや結城の姿を借りて人間の本来的に持っている悪の部分を示したかったのではないでしょうか。ロックや結城は極端な例ですが、人間の心の中には、大なり小なり悪なる要素を持っており、生きてゆくこと自体、悪と無縁ではありえないと言っているような気がします。
 ロック自身もお金について、「何十万もの人間の恨みと憎しみとはかない望みが染み込んでいるんだ」と作品の中で言っていますが、本質をついた言葉です。人間はどろどろしたものを持っており、悪とは切っても切れない関係だと言いたげです。
 人間とは本当に底知れぬ存在です。オウム真理教の麻原影晃にしても、彼を悪魔と決め付けることは簡単ですが、やはり人間の心の奥底に持っている闇の部分が肥大化した形で表れたと言えるのではないでしょうか。ロックや結城がフィクションの世界だけの人物ではないのが恐ろしいのです。

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