フランス文学探訪24 「ペスト」3 密出国を断念しボランティア活動をした新聞記者

 「ペスト」の主人公リウーは妻を療養地に送ったままペストのために町が閉ざされた状態が続き、妻に会えませんでした。結局、妻は町が開放される前に死んでしまい、リウーは妻の死に目にもあえませんでした。リウーもまたペストの犠牲者の一人だったわけです。
 この小説にはランベールという新聞記者が登場します。彼はパリの人間でしたが、たまたまオランの町に取材に来ていたために、町が閉鎖になって出られなくなりました。パリには恋人が待っていましたが、町から出る許可は得られませんでした。それも当然のことで、ペストに彼が冒されていないという保証がない以上、それは認められないことでした。しかし、彼は役所に談判し、出国してもらおうと必死になります。恋人との別離を余儀なくされた彼の気持ちはよく分かりますが、その町の人間ではないからと言って、例外規定は設けられませんし、身勝手な行動だという印象を受けます。
 彼は焦って、裏の社会に手を回して、密出国をはかろうとします。町の門番を抱きこんで、抜け出そうというものであり、この小説ではその苦心談が具体的に書かれています。見張りが密出国を黙認してくれる町の門番の番に回るのを待たねばならず、なかなかスムーズには行きません。さんざん苦心した末、ようやく門番の男の家に泊まり込み、脱出できる日を待ちますが、リウーやタルーが献身的にペスト患者のために取り組む姿に心打たれて、脱出の時を目の前にしながら、出国を断念し、リウーたちの活動にランベール自身も参加するという選択を取ります。
 なかなか感動的な場面であり、ランべールも他人のために力を尽くそうという人間的な感情を失っていないことに読者の胸も熱くなります。それまでの彼の姿が利己的なものだっただけに、余計読者はそういう気持ちを強く持ちます。新聞記者と言えば、客観的な姿勢、冷静な報道を要求されるものですが、新聞記者も一人の人間であり、人間的な良心を持ち合わせているはずですし、彼もそれを行動で示しました。
 そのような彼は結局、ペストが蔓延した時期を無事に生き残り、恋人との再会を果たします。彼の苦労が報われた形であり、そういう意味では彼は幸せでした。なにしろ、そうならずに愛する者と再会できず死に別れた人が余りに多かったのですから。
 

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