漫画探訪24 手塚治虫「ブラックジャック」4 父親への復讐と和解

 ブラックジャックが本間博士に手術してもらって命が助かったことによって、医者を目指すという話は、野口英世が医学を志すようになった経緯と似たところがあります。野口英世は不自由になった手を医者に手術して治してもらったことに感謝して、自分も医者になることを決意しますが、手塚治虫の頭には野口英世のことがあったのかもしれません。
 ブラックジャックが遭った爆発事故は、彼の心に憎しみを生み出すことにもなりました。この事故は人為的なものですし、防ごうと思えば防げたものでした。彼の家が建てられたところは、かつてアメリカ軍の特別射撃練習場があったところで、不発弾が埋まっていたにもかかわらず、その事実を隠して家を売りました。
 彼は母親の一生をだいなしにした犯人を突きとめて母親が取けた苦痛以上のものを犯人たちに与えてやると心の中で復讐を誓いました。金をため、その金を犯人捜しにつぎこみました。ブラックジャックが手術で法外な金額を要求するのは、そのためもありました。そして彼はその事件の関係者が五人いることを突きとめますが、漫画の中に登場するのはそのうち二人だけです。作者はまだ後を続ける予定があったのかもしれませんし、他のことに興味が移ってしまって、続きを断念してしまったとも考えられます。
 彼の父親は、寝たきりになった母親を捨てて女と海外に逃げ、マカオで事業に成功します。その父親が、医者になったブラックジャックの前に現れ、病気で顔が崩れた現在の妻の整形手術を依頼しますが、ブラックジャックはその女の顔を自分の母親の顔に作り変えることによって、父親への復讐をなし遂げました。
 もっとも、父親が死んだとき、父親の筋肉や皮膚をもらって、自分の足を手術し、父親の体の一部が彼の体の中で生き続けることになります。曲がりなりにも父親との和解がこういう形で果たされたわけです。
 ブラックジャックが自分が命を吹き込んでやった、サイボーグ的なピノコを結構可愛がっているのは、肉親の愛情に飢えていた証しかもしれません。ピノコの方は、体は子供のままながら、ブラックジャックの妻を気取っていますが、ブラックジャックはむろん、異性としては彼女を意識していないものの、父親的あるいは兄的な気持ちで彼女に温かく接しています。

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