漫画探訪42 手塚治虫「火の鳥・望郷編」2 火の鳥のおかげで星が繁栄するも地球に帰りたくなるヒロイン

 10年後、ロミは人工冬眠から再び蘇り、カインの長男のロトと夫婦になります。実際はロミはロトの祖母ですが、計30年冬眠していたのですから、年齢的には30歳若いという計算になります。しかし、こういう奇想天外なストーリー展開は手塚治虫の面目躍如たるものがありますが、話はさらにSF的な発展を見せます。
 カインの三男のエベルは発明家であり、六男のハランは地質学者として石油を採掘するなどそれぞれ役目を果たしていましたが、トラブルメーカー的な存在なのは七男のセブであり、ロミと結婚したいと言い出し、一時ロミを誘拐同然に連れていきます(ロミは無事に連れ戻されますが)。
 しかし、火の鳥はセブが一番素直だと彼を見込んでおり、火の鳥のいる火の壺へ来たセブは、火の鳥に選ばれし者になります。ロミが生むのは男ばかりという状況のもとでは、この星に展望はないのですから、セブのような者が登場する必然性があったわけです。火の鳥はロミと一緒になりたがるセブの思いをかなえてやろうと、ある星へ行き、コケのように地面に張り付き、どのようなものにでも変身するムーピーという生物を一匹、岩のかけらに乗せて、エデン17に連れて来ます。このムーピーは相手の心を読んで順応させるという特技も持っていましたが、こういう不思議な生物を考えつくところも、手塚治虫の豊かな発想力の賜物です。もっとも、ムーピー族はムーピーが連れて行かれる条件として、いつかムーピー狩りがやってきたら、種族の誇りのためにそのムーピーを殺してくれと言いますが、これは明るい結末にならないことを暗示しています。
ムーピーはロミに変身し、エデン17でセブと一緒に暮らしますが、ムーピーは目が見えず、頭にツノが生えています。二人の間にはたくさんの女の子が生まれ、やがてロトの息子たちと結婚して、ロミの一族とムーピー一族との混血の子が誕生します。生まれた子供は4、5年で青年になりますからまたたくうちに人口が1万人に増えて、みな働き者で正直者であり、エドナの町が出来上がり、ロミは女王的な存在になります。
 このままいけば、ハッピーエンドというところでしょうが、「望郷編」という題名が示す通り、ロミは地球のことが恋しくなり、しきりに帰りたがります。ロミの一族とムーピー一族との子供の一人であるコムはそういうロミの気持ちを知り、彼女に協力します。ロミはコムの母(やはりムーピーです)に自分の身代りになってくれと依頼し、コムの母はそれを承知し、ロミの替え玉になります。コムは念力で、自分とロミが乗った岩のかけらを動かし、地球への長い旅に出かけます。ロミもこの星でそのまま暮らせば不幸な結末を迎えずに済んだと云えますが、故郷(ましてや地球です)に帰りたいというのは、人間の自然な思いであり、ロミの止みがたい気持ちは痛いほど分かります。
 この後は、映画で云うところのいわゆる「ロード・ムービー」的な展開が用意され、いろいろな星にたどり着き、危ない目に遭う話になります。

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