漫画探訪43 手塚治虫「火の鳥・望郷編」3 地球から外に出た者はシャットアウト

 ロミとコムが最初にたどり着いたのは、高熱のために焼けただれた星であり、そこでは人々がのたうちまわっていて、さながら灼熱地獄の世界でした。ここには、手塚治虫の闇の部分が垣間見えますが、彼の空襲体験が色濃く反映しているような気がします。
 さらに地球連絡員の牧村がロケットから彼らの岩に乗り移ってきて、油断しているうちに牧村のロケットが離れていき、牧村も彼らと行動を共にすることになり、3人旅の始まりになります。ここで牧村を新たに登場させているのは、地球の現状を語らせる意味と、地球帰還に地球連絡員という存在が必要だったという点が挙げられます。
 3人が次に到着したのは食人星であり、人間においしい空気や景色を見せておいて引き付け、人間を食べてしまうというものであり、彼らはすんでのところでその危機から脱出します。食虫植物のようなものを星をしているところがユニークでスケールの大きさを感じさせます。かつて流行した人形劇「ひょっこりひょうたん島」(井上ひさし作)には、「デンドーロパクパク」という食人花が登場しており、当時中学生だった自分にはインパクトがあって、恐怖心を覚えたものでした。
 次の星は鉱物が進化して主導権を握っており、彼らは巨大な鉱物のローラーに追いかけられますから、まるで巨大な岩の塊に追われる「インディ・ジョーンズ」の映画のような世界です。しかし、この時、ロミは頭を打って怪我してしまい、宇宙商人スダーバンが若返り法でロミを救います。しかし、これにはムーピーがいる星を教えてくれるという条件がついており、これが後に命取りになります。メフィストフェレスに魂を売ったファウストのようであり、しかもロミは若返ったものの、細胞を無理に活動させたため、3日経てば死ぬという代償を払わねばなりませんでした。このあたりからこの作品は悲劇的な結末に向かって走り出したという印象を受けます。
 地球連絡員の牧村は最初地球がなくなったとロミに嘘をついていましたが、地球は存在しているものの、人口が増えすぎたため、地球から外に出た者は帰って来れず、シャットアウトされているという事実を伝えます。もちろん、これは仮に将来、宇宙に移住できたとすればの話ですが、そこまでの展開を考える手塚治虫はまさに宇宙人的な発想の持ち主だと云えます。しかし、悲しい話ではあります。
 ロミたちはロケットを宇宙商人から買い、人間のままでは地球に戻れないため、ロミとコムはロボットに化けます。牧村は地球連絡員ですから、自由に地球と宇宙を行き来する特別の許可を与えられていました。牧村を登場させる意味があったと先ほど述べたのは、そういうことです。
 宇宙商人は彼らを地球に下ろすと、ロケットを勝手に操縦して地球を去り、ムーパー族を捕まえるためにエデン17に向かいます。それがエデン17に悲劇をもたらしますが、地球に取り残された形になったロミとコムにとっても、同様でした。

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