フランス文学探訪98 サガン「ブラームスはお好き?」1 恋人がいながらも孤独を感じる39歳の女性 

 この小説のヒロイン、ポールは39歳、室内装飾の仕事をしています。彼女には40過ぎのロジェという恋人がいますが、自由を楽しんでいるのは彼だけで、彼女自身は孤独を感じています。それもそのはずで、ロジェは彼女の部屋に泊まることはせず、別の女性とのアバンチュールを楽しむ遊び人です。彼女は自分を必要としてくれる男を求めていましたが、そんな時、室内装飾を頼まれた家の息子シモンと出会います。彼は25歳の美青年であり、一目見た時は自分の好みのタイプではないと彼女は思いますが、照れた様子を見せる彼に好感を抱き、母性的な愛情を彼に覚えるようになります。シモンも年上の彼女に関心を抱き、彼女を外で待ったり、彼女が仕事をする様子をじっと眺めたりします。たまたまバーに来ていたロジェと一緒のポールをシモンが見つけ、飲んだ勢いで彼女にモーションをかけ、ロジェの怒りを買います。
 ここのあたりはいかにも若いシモンの姿が描かれています。もっとも、年齢のことで言えば、39歳のポールは、若さを失って肌の衰えを感じてきた中年女性として描かれ、現代の感覚とは随分違うなあという印象を受けます。この小説中にも、ポールが自分のことをお婆さんと考えているという描写がありますが、人生80年の今日、違和感を覚えてしまいます。
 さて、ロジェは映画女優とも関係を持ち、ポールに内緒で泊まりに行きますが、その場面をシモンが見てしまい、余計彼はポールのことが哀れになります。シモンは彼女をブラームスのコンサートに誘いますが、その招待状の文面が、題名になった「ブラームスはお好き?」です。17歳の少女に男子が書くのと同じ文面だと彼女は苦笑しますが、彼の誘いに応じます。ロジェに心を満たされず、道に迷っていた自分に声をかけてくれたのがシモンだと彼女は思い、ロジェを好きだと自分が思い込んでいただけに過ぎないと思い至り、彼女はシモンにのめり込んでいきます。
(2004年02月14日  公開)

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