永田和宏さんが亡き愛妻の河野裕子さんのことを詠んだ短歌・河野さんの辞世の歌をめぐっての解釈の違い

 朝日新聞の「喪の旅」欄に、歌人で細胞生物学者の永田和宏さんのことが取り上げられていました。妻でやはり歌人だった河野裕子さんが亡くなって10年余り経ちますが、最愛の妻を失った寂しい思いをずっと短歌に詠んできたことなどが記され、その歌も一部紹介されていました。
 
 あほやなあと笑ひのけぞりまた笑ふあなたの椅子にあなたがゐない

 上の句が少しコミカルな表現だけに、下の句のなんとも言えない寂寥感がひしひしと伝わってきます。この記事では、河野さんが亡くなる1日前の彼女の最後の歌も取り上げられていました。
 
 手をのべてあなたとあなたに触れたきに息が足りないこの世の息が
 
 この歌について、以前、永田さんが講演会で、二回出てくる「あなた」はいずれも自分のことを指していると解釈しているのに対して、彼らの子供たちは、永田さんと子どもの両方を指していると解釈しているとおっしゃっていました。確かに「あなたとあなたに」ですから、複数の人物を指していると考えるのが普通ですが、「あなたと」触れたい、「あなたに」触れたいと繰り返して言っているとも取れないことはなく、それなら夫の永田さんのことを詠んでいることになります。永田さんは直感的に自分のことを詠んだものと感じ取ったのではないでしょうか。そこには、二人だけに通じる思いがあったという気がします。
 永田さんは「塔短歌会」の前主宰ですが、「塔短歌会」を創設されたのは、高安国世さんです。「塔短歌会」は,正岡子規門下の伊藤左千夫らが創刊した「アララギ」の系統ですが、「京大短歌会」とも関係が深く、永田さんも「京大短歌会」の顧問を務められていました。私は高校時代から「巻雲短歌会」に所属していたため、大学時代は「京大短歌会」に入会することは考えませんでしたが、むろん、その存在はよく知っていました。
 永田さんは京都産業大学名誉教授なので(京都大学名誉教授でもありますが)、娘が京産大で生物工学を専攻し、卒業後も5年間実習助手として務めていたため、永田さんのことはよく知っていましたが、有名な歌人であることは全く知らなかったと云います。
 

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント